* 注意 *
片桐ルート、BADEND後の話です。
勿論佐伯は出てきません。
しょっぱなから流血騒ぎです。
法律関係は良くわかりません。
誰も救われないよ!










以上、ご理解頂ける方はどうぞ。










無季景




 声を上げて泣いた。まるで子どものように。夕陽の射し込む廊下で、彼を膝に抱き泣いた。息子の時だってこんなには泣かなかった。あの時は妻という他人が居て、独りではなかった。彼女がその分泣いてくれた。今、佐伯克哉という他人を喪った自分は独りだ。他に泣く人間はいない。それがこんなにも悲しい。
 泣き声に混じって悲鳴が聞こえた。しゃくりあげながらその方向を見ると女性社員が固まっていた。その声に呼ばれて人が集まる。救急車だなどと叫びながら、でも誰もが遠巻きに見るだけで近付いてこない。
「課長っ!」
 その間から本多が顔を出し駆け寄って、膝の上にいる人物が誰であるかをその場にいた誰よりも先に知った。
「なん、で……?」
 素人が見たって生きているかそうでないかはすぐ判る。本多は暫く目の前の現実を理解するために動きを止めた。だがその間も忙しなく動いていた目が、脇に落ちた包丁を捉えた。
「………………課長、なんですか?」
「……はい」
 鼻をすすって答えると、胸倉を捕まれた。言葉が出てこないのだろう、そのまま息を止めている。
 何故。
 どうして。
 そんな当たり前に思える言葉か出てこない。問われたところで答えられない。なるようになった結果がこの事態なのだから。この廊下に至らない道はあったはずなのだ。それが何かはわからない。
 本多は泣いていた。
「ごめんね、本多くん」
「そんな、言葉が聞きたいんじゃないんだ」
 絞り出すような声だった。
「うん……でも、ごめんなさい」
 また新しい涙が零れる。そのまま五分程が過ぎ、また廊下の先が騒がしくなる。救急隊が来たようだ。本多は掴んだままだった手を離してその場に立ち上がった。
 救急隊員達は三人と外野を隔てる位置に陣取り、惨状に眉をひそめながらも与えられた役割をこなしていく。
「運びますから」
 最後にしっかり佐伯の顔を見る。血にまみれた手で顔にかかる髪を分け、そっと顔を寄せた。廊下の向こうにいる人は見えなかっただろう。上から本多と救急隊員が息をのんだ音が聞こえた。
「さようなら、佐伯克哉くん」





「僕は僕のした事を否定しません。人一人が、人一人を殺したんです。ちゃんと法で裁かれないといけません。心神喪失、心神耗弱、そんな後付は結構です。僕は、僕の意思で、佐伯克哉という人間を殺しました。そんな理由で罪を減刑して欲しくない。それでは彼に失礼だ。僕は、赦されたい訳じゃない」





 夏の頃だった。刑期を残して警備員室の横、小さなドアをくぐる。
「お世話になりました」
 白いものの混じった頭を下げる。もう来るなよと、きっとここから出て行く全ての人間に同じ願いを伝えているのだろう、刑務官の真摯な言葉にもう一度頭を下げて高い塀に背を向けた。
「…………」
 男が一人立っている。あれから何年か経ったけれど、忘れるはずも無い顔。
「迎えに来ました、課長。いや違うな……片桐さん」
「……本多くん」
「貴方の身柄を預かります。今日から、うちで暮らして下さい」
「え……」
「知ったところでどうなる訳じゃないけれど、俺は、貴方の口から全てを聞きたい」
 いつまでも変わらない、あの頃と同じ真っ直ぐな眼。
「迷惑じゃ、ないんですか」
 云われるがままに、彼の乗ってきた車の助手席、そのドアに手をかける。
「迷惑だなんて、今更ですよ。そんなのはあの日から被り続けてる」
「…………そうですね」



 君の居ない、長い罰が始まる。



初めての鬼畜眼鏡二次が片桐さんのBADENDその後とかどういうことなの。
という訳で、実刑喰らう片桐さんでした。殺人刑って何年くらいなんですかね。
とりあえず十年を言い渡されて態度良好につき保護観察で七年くらいで仮釈放、まで考えました。本多が勝手に住む場所を決めることは多分できないと思うんですが(出る前に多分届け出すよね?)、まぁファンタジーだしね。ということでひとつ。
うちの片桐さんは後を追いません。ヤンデレルートなのに眼が死んでなかったというのが理由ですが、あれは良かったと今でも思う。おかげで他の人を出来ないです。