諦めたように笑う
「それはだめよ」
ミドリは腕に抱いたモノをさらに強く抱きしめて嫌々と首を振る。
この子どもは外に出るとかなりの確率で動物を拾ってくる。
懐かれると言うべきか。
野生の小鳥を頭や肩に乗せて帰ってきたり、さいやらツチノコやらが後ろから付いてきたりとその時々で違うのだが。
これはちょっとダメだろう。
「森に返していらっしゃい」
どうしてもダメ?と目で訴えてくる。
「………お父さんにお願いしてみる?」
慌しい足音が聞こえた後に、だんっと乱暴に扉が開く。
「ちょっと何考えてるんですか!」
「一応止めたわよ」
「犬や猫とは違うんです。ランカーの幼生体など誰が育てるんですかっ」
「やっぱりだめ?」
「当たり前です!どれだけ育つと思ってるんです」
「ギア並」
「そのまんまじゃないですか」
はあ…と大きなため息を吐いて、シタンは椅子に座った。
「で、どうするの?」
「拾った場所に戻すしかないでしょう……。あー…、でも村に近い場所だと危ないかもしれません。
今夜にでも黒月の森かどこかに置いてきます」
「今すぐ、って言うかと思った」
「あれだけぎゅっと抱きしめてるのに、無理に取り上げられません」
只でさえしゃべってくれない娘に、これ以上避けられたくないのが本音だ。
「そう。私も一緒に行くわ」
「それではミドリが」
「大丈夫よ。この家に不法侵入できる人間がそうそう居る訳ないじゃない」
アナログに見える家でも侵入者撃退用の仕掛けはばっちりだ。
どこから拾ってきたのか『忍者屋敷』なる本を片手に時々増改築している家主のせいで、場所によってはお客でも危ない。
「たまには2人でお散歩もいいじゃないの」
「そうですか。麻酔薬を準備してきます」
「必要かしら?」
「今の所大人しいですが、あれは肉食の野生動物ですよ。そのままでは運べません」
「それもそうね。ミドリには何て言うつもり?」
「……貴女からどうにか説明して貰えませんか?」
「仕方ないわねぇ」
今回だけよ?とユイ困ったように微笑んだ。
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