ついにやってみました
ネコミミ兄さん(身長70センチ)



という訳で兄さんにネコミミとシッポが生えた話です
ケイオスの言動はケイジンに基づくものですが
そんなシーンは微塵も出てきません


出したら犯罪だ

愛しのネコミミシッポ様!




 いつものようにエルザに朝が訪れる。暗く落とされた照明がパッといきなり明るくなり、カーテンを開けたときに浴びる朝日のように部屋の中の船員に当たる。
「「うわあぁぁあぁぁぁぁっ!!」」
 そんなエルザにいつもとは違う叫び声。
「…………ぅにゃ……?」





 ある日ある朝、ジンにネコミミとシッポが付きました。










「どういうことなんだケイオス!」
「何で真っ先に僕なのJr.!」
 流石の出来事に普段は冷静沈着なケイオスも慌て気味。原因のジンはと言えば布団の上で身体を起こし、すっかり大きくなってしまった自身の着物に埋もれながら眠そうに目元を擦っていた。自身の変化に気付いているのかいないのかは解らない。その頭には黒く大きなミミがへちょりと伏せられ、辺りを埋めた着物の裾からフサフサの何かが姿を見せては引っ込める。
「何? どうしたのJr.君、ケイオス君」
 キャビンの外からシオンの声が聞こえる。きっとモモもいるだろう。二人は顔を見合わせると入り口に向かった。途中でまだ眠っていたアレンを蹴り起こす。
「おはよ……シオン」
「おはよう。それでどうかしたの? さっきの声」
「うん、それがね……シオン」
 視線を泳がせるJr.に代わり、ケイオスが奥を指し示す。その人差し指の先で、ちまっこくなったジンは大きなあくびをしていた。口の動きにあわせてミミがぴるぴると動きシッポがぴーんと伸ばされる。
 シオンは驚きに言葉を失い目を見開き、二人を掻き分け途中で声をかけたアレンを無視しゆっくりジンの元へと歩き出した。
「……に、兄さん?」
 がっくりと力をなくしたようにジンの前に膝を付くシオン。その声は震えていた。
「シオンさん……」
 Jr.の側でモモが心配そうな声を出す。
 当のジンは漸く目が覚めたのか目の前のシオンに気付くと、周りの空気を無視した笑顔で口を開いた。
「おはよぅございますしお」
「可愛いーーーーーー!!!!」
「みぎゃっ!」
 ジンの言葉を遮りシオンが兄に飛びついた。着物ごとジンを抱き上げ激しい抱擁と頬擦りをする。ジンは急激に変わった視界と圧迫感にじたばたともがいた。
「きゃー! 可愛い! 何なの兄さんどうしたのもう何これシッポにミミ? 信じられない本当に!?」
「し、シオン……?」
 思いもよらない展開にJr.が力の無い声を出す。と、そんな彼の横をモモがすり抜ける。
「シオンさん、私にも抱かせてもらえませんかっ」
「いいわよモモちゃん、はい!」
 本物のネコを渡すようにシオンからモモにジンが渡される。
「きゃー! ごめんなさい本当は見た瞬間から触りたかったんです!!」
「よね! これは反則よね!」
 きゃぴきゃぴと騒ぐシオンとモモの間で小さなジンが一生懸命もがいている。その小さな甲高い悲鳴でようやくJr.は我に返った。それにしても女性陣のなんと逞しい事だろう。シオンにいたっては実の兄であるはずなのにあの騒ぎよう。可愛いものに目がないとは良く聞くが、いざ目の前にすると少々引き気味になるのは許してもらいたい。
「……全く……なぁ、ケイオス」
 同意を求めようと隣を見ると、ケイオスはうっとりとそんな三人を見ていた。
「おい、ケイオス……」
「可愛い…………ジンさん」
「……」
 Jr.は盛大な溜息を付くと、いつの間にかきていたジギーとコスモスの間をすり抜けキャビンから出て行った。





「それで、これは一体どういうことなんだ」
 年の功でジギーが口を開く。といってもシオンとモモはジンにかかりっきりだしケイオスもそんなジンを見つめているだけだし、Jr.は勘弁してくれと遠い目をするだけだしコスモスが自主的に発言するはずも無いしアレンだって口を開けない。結局彼しか残っていないのだ。
「どうもこうも……起きたら、なぁ? ケイオス」
「うん、そう。起きて見たらジンさんがこんなかわいい姿に」
「……一時預かる」
「あぁ、兄さん!」
「酷いですよジギー」
「話が進まん」
 すっかり一歳児体型のジンは、ジギーの腕の中で助かったと思いきり息をついた。今のジンの格好はといえば、Jr.のシャツを借りて包まれている。ちなみに下は手拭で作った簡易褌。便利だ。
「ジン、思い当たる点は無いのか?」
 そっと膝の上に抱いたジンに、ジギーは問いかける。
「もうしわけないですがまったく」
 口調は相変わらずだが声が高い。更にへたっとミミが垂れて視覚を刺激する。
「いやー! 可愛い兄さん!!」
「お持ち帰りしたいです!」
 そんな状況に頭を痛めているのは何もジギーとJr.だけではない。一番悩んでいるのは当のジンだ。起きたときには気付かなかった。いきなり視界が大きく動いて両側から叫び声が聞こえてガクガクと揺さぶられ、命からがら逃げ延びた先はケイオスの腕の中で。ひとしきり取り乱した後に三十四回深呼吸して何とか落ち着き、服を借りて着替え外へ出れば再び二人にもみくちゃにされ。
 泣きたい。
 両手で頬を押さえながら目の前の机の角をじっと見つめる。うるりと視界が揺れた。その時ぽんと、小さくなった肩をジギーが叩いた。見上げた先で無愛想な目とぶつかる。さり気ない優しさがジンには嬉しい。それに比べテーブルの向かいの妹ときたら。
「そうだコスモス。こういった症状を起こす何か、調べられないかい?」
 完全に意識の外に置かれていたアレンが発言する。
「少々お待ち下さい」
 直立不動のままじっと目の前を見つめ、二十五秒後視線をアレンに戻す。
「ここ十年のデータにはそのようなものはありませんでした。範囲を広げますか?」
「……そうね、今から遡ってあるだけ探してみて。応答回線だけ残してそれに専念して頂戴」
「了解しました。調整槽に戻ります」
 コスモスを皆で見送り、視線をジンに戻すと今度は真面目な唸り声を上げた。
「それにしても何なのかしら。風土病?」
「だとしたらモモたち全員も発症しているはずです」
「そうよね。ずっと一緒だものねぇ……」
「虫にでも刺されたとか」
「そうなのか?」
「うーん……きおくにはありませんが」
「知らないうちに刺されているかも知れませんね」
「デュランダルに検査させてみるか」
「さいけつですか、それがはやいかもしれません」
 という訳で早速検査キットを送ってもらう。一応口内の粘膜も採取、残すは採血のみ。
「……だめっ! 私には出来ない!」
「モモもダメですっ」
 シオンとモモは白旗を掲げた。というのも送ってきたキットは一昔前の注射器で採取するタイプだった。手持ちがそれしかないらしい。しかたないと針を向けるとジンの頭に付いているミミがふるふると震えるのだ。ジン自身も不安な表情を浮かべている。
「すみません、どうも、なんか……」
 いつもなら何でもないんですがと、ジンも戸惑っていた。Jr.とジギー、アレンはこのタイプを使いこなせず、ケイオスはといえば女性陣と同様の理由で手が震えてしまう。下手をすれば彼女達より酷い。
「コスモス、戻ってきてっ」
 乞われ戻った無慈悲な天使は、遠慮なく小さな腕から血を採取した。



ちょっと今更ですが。続きません。多分。