終わらされた恋五題
終わりは一体何処だったか
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始まりの日は良く覚えているのに、終わりの日は良く覚えていない。
はっきりと別れを告げぬままに、気付けば数年が経っている。
でもあのどうしようもない雰囲気の中で、二人とも終わったと気付いていた。
もしもこんな事がなかったら、二人はどうなっていただろう。
幾度となく描こうとした未来は真っ白なままで何度も宙に散った。
だいぶ伸びてきた髪を、切ろうと思った。
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私の知らない彼と彼
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軍に入る前からの知り合いだという彼と中佐。
聞けば彼は中佐を追って軍に入ったとか何とか。
見た目露骨に仲が良いと言う訳もなく、同じ釜の飯を食べたとかいう雰囲気。
誰もその中には入れない。
しかし今その関係は崩れ始めている。
全てが壊れる時まであと僅か。
それでも、崩壊した後も、彼等には彼等だけの世界がきっとずっと続くのだ。
私と彼とは壊れるというのに。
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巧すぎた嘘泣き
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泣いて縋れば良かったかしら。
そういう女だったら良かったのかしら。
共に来て欲しかった？ それとも攫って欲しかった？
残念ながらそういう女じゃなかった。
悔しくて泣けても寂しくて泣ける女じゃなかった。
嘘だって泣けやしないのよ。
彼だってわかってるのよ。
泣いたって彼は来ないんだもの、嘘なら吐くだけ無駄よ。
だからシャワーで全部流して、未練もなく出て行くだけよ。
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光が見えない
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未来って何でしょう、貴女には見えていますか。
今が精一杯で、先の事なんて何一つわからないのです。
あの日以前は見えていたのか、それすら思い出せないのです。
ただ刹那に過ぎる時を必死にこなしていく事しかできないのです。
昔貴女と居た時には、私は光が見えていたのでしょうか。
何も覚えていないのです。
だから闇もわからないのです。
貴女は今、何を見ているのでしょうか。
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憎悪が芽生える前に
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ねぇ、どうしたらいいんでしょう。貴女を引き止めたいのに、其方へ行って欲しくはないのに言葉が見当たらないのです。貴女だけを行かせない様にするだけでいいなら、憎まれても怨まれても何処かへ縛り付けて閉じ込めて外に出しはしないのに。それで済むならどれほど簡単だったでしょう。私も貴女も大きな渦の中にいて、其々の思いで立つ位置を違えたのです。だから言葉は見つからないし縛り付ける事もできないのです。
迷わないで。
懇願しないで。
颯爽と踵を返して別れを告げて。
何時か私は貴女を殺してしまうから、その日が少しでも先になるよう。
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- [09/04/12]
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