まだ冬




「壬生君、壬生君」
「なんだい」
「触っても良い?」
壬生の膝の上には開かれた雑誌があり、右手はだらんとソファに落ちている。
龍麻は床にぺたりと座り込み(ソファが空いていても何故か龍麻は床に座る)、壬生の掌だけをまじまじと見つめている。
「好きにしたら」
頬杖をつきながら顔は上げない。
右手に温もり。
するりと包まれて、さらさらとした感触が心地いいのか悪いのかわからない。
ひっくり返し、なでくりまわし、握りしめ、指でなぞり、僕の手は玩具じゃないよといい加減言おうとしたら。
「壬生君、壬生君」
「なんだい」
「触っても良い?」
壬生の掌を握りしめながら、龍麻は壬生の頬をじっと見る。
「好きにしたら」
興味もなさそうに壬生は返す。
「だめだよ、壬生君」
壬生の言葉に、龍麻が言う。
理不尽な物言いに壬生が漸く顔を上げる。
「君が言ったんじゃないか」
「でもさ、だってこんな風に甘やかされたら」
龍麻は照れくさそうに、でもどこか幸せそうに笑う。
龍麻はいつも笑う。
色んな笑い方をする。
そのいくつを自分は知ってるのだろうと壬生は思う。











「壬生君の事を、もっと好きになっちゃうじゃないか」














「好きにしたら」
ガラス窓を冬の風がどぉっと打った。



出会ってしばらくして、壬生君と龍麻の距離が近づいてきた頃の話。
主人公が一生懸命アプローチしています。壬生君は照れまくって対処できていません。結果的にツンデレです。可愛いなぁ、もう。
壬生君は付き合うまではつれなくて、付き合い始めったらベタベタになって、最後またつれなくなるんじゃないかと。可愛いなぁ、もう。
「壬生君」という音が好きです。我が家の主人公は基本的にそう呼びます。ないしは「壬生」。「紅葉」は夜の褥の中だけなんですうふふふふ。