片思いラブ -1-




白いプロテクターを身にまとった巨体達が、わらわらとシロアリの如く学園に拡がってゆく有様を、葉佩は装備を整える横目で見ていた。
(下ッ手な展開だな〜。すーぐ警察が来るっちゅーねん)
まがりなりにも先進国なのだ、ここは。
「有色人種の国は紀元前の国家レベルだと思ってんじゃないかねっと!!」
あのクソヤロー、ぶっ飛ばすと、口の中で呟きながら、葉佩は勢いよく立ち上がった。手際の悪さを見るに、今回の担当は大した輩じゃなかろう。遺跡の方角の警備が異様に手薄…というか校舎の制圧に人をかなり割いているところから、まだ敵は遺跡の場所も知らないと思われる。
「斥候も本隊も使えないなら世話ねーわな」
斥候はおそらく例の「彼」だろう。尤も、あいつがそこまでレリックドーンと深い関わりを持っているとも思えなかったが。
どんな裏があるにせよ、葉佩にとっては連中は「荒らし」だ。葉佩自身も遺跡ドロボーであることに変わりがない点については認めるが、少なくとも他人の努力を横から掠め取っていったりはしない。
この遺跡を、ここまで掘り進めたのは、自分だ。
「ったく!プライドもねー輩を俺は認める気はないね!」
鼻息荒く、しかし葉佩は遺跡には向かわず校舎に向かった。
遺跡は待ってくれる。まずは友人の救出。
秘宝は盗まれても、痛むのは葉佩の経歴とロゼッタの懐である。しかし命は、失われたら二度と帰っては来ないのだ。
どうせ連中が秘宝に辿り着くまで、随分時間があるだろう。葉佩の見立てでは、あの遺跡はまだもう少し奥がある。多少放っておいても問題はなかろう。
それより気になるのは、秘宝はまだ下だと分かった時に、連中が派手な掘り進め方をして遺跡を破壊しないか、それを聞きつけた警察によってあの遺跡が日の目を浴びる羽目にならないか、である。
全く、面倒ごとを持ち込んでくれたものである。
(白スーツ…今度会ったらぜってーシメる!)
葉佩は荒魂の剣の束を握りしめつつニター……ッと、笑う。

笑いながら、真っ先に向かったのは、音楽室。