三ヵ月分




「先生、そっちに行ってもいい?」
「テスト作ってるからダメ」
 テーブルでパソコンと格闘しているジンに断られ、ペレグリーは素直にソファに身を沈めた。そして自分で持ち込んだ雑誌を開いた。
 少し古いその雑誌では、クリスマスから年末にかけての『恋人と二人で行く』おでかけ特集が組まれていた。どのページもキラキラとまぶしい。
 良くわからないカタカナが散りばめられた紙面を適当に読み流しつつ、ペレグリーはいくつかのページの耳を折る。
「どこかいいところあった?」
 特集ページだけ二回読んだところで上から声が降ってきた。ジンがカフェオレの入ったマグを持って目の前に立っていた。二つ持っていた一つをペレグリーに渡すと、もう一つを持ち直してジンは彼女の隣に座った。
「こことか、いいでしょ?」
「どれ……何、パレード見るの?」
「まさか! その間に絶叫系を制覇するのよ」
「だと思った」
「ね、来年のクリスマスはいいでしょう? 私もバイトしてお金溜めるから」
「うん、そうだね。それまでに私は貴方に捨てられないよう頑張らないと」
「またそういうこという……」
 ふくれるペレグリーの頭をなでて、ジンは髪の上から額に軽くキスをした。
「早く卒業したいなー」
「受験を無事にクリアしたらね」
「イヤなこと思い出させないで」
「ははは、じゃあ、あと三ヶ月を頑張れる、ようになるかは分からないけど」
「?」
 ソファから立ち上がりマグをテーブルに置くと、ジンは部屋を出て行った。しばらくして戻ってきたきた彼の手には小さな紙袋が一つあった。
「まぁ、どうぞ」
 ほんのり赤くなっているジンからマグと交換に袋をペレグリーは受け取り、視線に促されてそれを開く。中には更に小さな箱があった。テーブルに寄りかかりながらこちらを見ているジンを見上げれば、実に居心地の悪そうな顔でペレグリーを見ている。
 箱を開けて、そこから出てきたのは指輪だった。
 もう一度顔を上げてジンを見ると、すっかり茹で上がって食べられるのを待つエビのようになっていた。



脳内で物凄く盛り上がってしまった先生ジン×生徒ペレ。
高校卒業するまではひっそりとお付き合いする二人です。お泊りも禁止。