走って十分




 そろそろ彼女が来るはずだ。
 先ほどから降り始めた雨が静かに窓を叩いている。
 ぼちぼち来るはずであろう少女のためにカフェオレを作るべく豆を挽く。
 背伸びをしたいためかコーヒーが多めのカフェオレには砂糖を少々。
 そんな好みにくすりと笑ったジンの耳に呼び鈴が聞こえる。
「はい、いらっしゃ」
 ドアを開けて目の前に見えたのはホットパンツにパーカーを着たペレグリーの姿だった。その前を開け放したパーカーの下に見えるシャツは透けて下着がうっすらと見えている。
 辺りを確認し近所の住人の眼が無いことを刹那で確認すると玄関へとペレグリーを引き込みドアを閉め、鍵をかけ、靴を脱がし抱き上げるとダッシュで風呂場へと彼女を運んだ。
「雨が降ってきて」
「見れば分かります全部濡れました!?」
「濡れたって言ったほうがいい?」
「場合によってはコンビニを検索します」
 ジンの眼が本気だったのでペレグリーは素直に現状を報告する。降り出したときにはもう駅を降りていて、陸上の短距離選手である彼女が走れば駅からここまでの距離などたいしたことは無い。ただ、上半身はどうにも庇いようがなかった。
「パンツまで濡れてたら買ってきてくれた?」
「ちょっと遠くのコンビニまでね。でも無事なら何より。他は帰りまでに乾かしますから、これ、ネット」
「わーい、先生の服」
「新品ですからご心配なく」
「それならそのあとコレを先生が着るんだね」
 ジンは無言でバスタオルと下ろしたての服を置いて脱衣所から出た。
 どうにも彼女のペースだった。
「ノーブラなう!」
 自信満々に胸を張る彼女にカフェオレを噴出すまであと十分。



翻弄はされるけれども決して落ちないジン先生。です。