食われる羊の腹を縫う
頭からお尻まで隠して、すっぽり静かに時計の内に。
声を出さず、音を立てず、目の前で起こることには目を瞑り。
そうでないと、食べられてしまうから。
たとえ誰の何がどうされようとも何もしてはいけない。
助けは期待しないほうが良い。
誰もが自分のことで手一杯なのだから。
外にどれだけの狼がいると思う。
誰もが他人に目を向けている暇などない。
「……たすけて、兄さん」
声を出せば、見つかると忠告したはずだ。
「いや、嫌ぁ、誰か」
誰も気づくはずがないとも。
「……っ!」
その声は、今回は無駄になることはなかったけれど。
「ひっ……」
戦場の王子様はいつだって血まみれなのだ。
- [12/10/08]
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