食われる羊の腹を縫う




 頭からお尻まで隠して、すっぽり静かに時計の内に。
 声を出さず、音を立てず、目の前で起こることには目を瞑り。
 そうでないと、食べられてしまうから。
 たとえ誰の何がどうされようとも何もしてはいけない。
 助けは期待しないほうが良い。
 誰もが自分のことで手一杯なのだから。
 外にどれだけの狼がいると思う。
 誰もが他人に目を向けている暇などない。
「……たすけて、兄さん」
 声を出せば、見つかると忠告したはずだ。
「いや、嫌ぁ、誰か」
 誰も気づくはずがないとも。
「……っ!」
 その声は、今回は無駄になることはなかったけれど。
「ひっ……」
 戦場の王子様はいつだって血まみれなのだ。



という、ジンの夢だったり。