WIBNI Cinder Ella -ある兵士の証言-
城の食堂。
国の屈強な男達がエネルギーを補充するべく集まるところ。
補充がすめば人々は交代の時間まで思い思いの場所で過ごすべく、普段はそんなに込み合うことはない。だが。
「何作ってるの?」
「カレーに乗せるクリームコロッケです」
「うわぁ、美味しそう」
「揚がったら一つ差し上げますね」
「ほんと?」
「あぁ、ほら。泡がついてます」
そっと細い指が頬についた洗剤の泡を拭い、水に流す。
「ありがとう」
「いえ」
キッチンの中の人間までも動きを止めてそれに見入る。
「……クリームコロッケ揚がりました!」
トレイに乗ったたくさん狐色の塊が彼から渡された。その瞬間クリームコロッケカレーの需要が一気に高まる。
「はい、景時さん。熱いですから気をつけて下さいね」
「あー……あふっ……はふ、はふ」
「大丈夫ですか?」
「ん……うん、は…美味しい〜! 譲くんって本当に料理上手だね」
「いえ、俺は教わったそのままに作ってるだけで」
照れたようにホンワカと笑う彼に、ホンワカと笑い返すその相手。
「洗い物手伝いますよ。ちょっとそっちに詰めてください」
「うん」
後は仲睦まじく二人で馬鹿にならない量の洗い物をせっせと洗う姿が食堂中に晒される。今までスムーズに流れていた人の流れは滞り、見張りなどの交代時間には交代前の人と交代後の人で食堂が込み合うようになった。
だが不思議と苦情が出ることはなく、今日もその二人は食堂の混雑とは無縁に自分達の世界を展開している。
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