追憶の緋 -10-
「なぁ〜んて事もあったよな〜」
俺はベットで煙草をふかしながら言った。
「回想?追憶?老けたな、デスマスク」
隣でカミュが裸体を隠す事なくさらけ出しながら減らず口を叩いた。
ったく、どこで育ち間違えたんだよ!あん頃はあんなに泣き虫だったクセに。
最近じゃ本当に口が減らないで好き放題だ。いい加減にしろってキレてやりたくもなるが、何故かその辺りは要領がよく、いつもごまかされる。
「煙たい。外で吸え」
そんな事言って蹴ってくるしよ。
先輩に対する尊敬の念とかはねぇのか!?
「デスマスクを尊敬できるなら犬でも尊敬できる」
ウザッ!
俺が吐き出すようにそう言うと、勝ち誇ったようにカミュは婉然と笑った。
ったく。
「っん」
俺が噛み付くように唇を合わせると、鼻から息を漏らす。
こんなトコまで要領がいい。全く、どこで育て間違えたんだか。
「デスマスクが育てたんだ。デスマスクのせいだ。私のせいじゃない」
そう言ってまた、ごまかす。
あれから十年以上が経って、カミュも俺もあの頃からは比べ物にならないくらい背が伸びて、声変わりもしたし強くもなった。
二三回死んで、色々面倒な事に巻き込まれたりもしたけど、今はまぁ、おおむね平和だ。平和だから、こうしてのんびりセックスして馬鹿げた事を話すゆとりもある。
「俺が育てたって、一緒にいたのは一年程度じゃねぇか」
「私の面倒はデスマスクがみてくれるんだろう?」
意地悪い笑いを浮かべながら、カミュがまた減らず口を叩く。
コイツ、本当にシベリアで真面目に聖闘士育成してたのか?
「言った言葉には責任持つものだぞ?」
あぁ、うぜぇ。
うざい口だ。
俺は身を乗り出してカミュの口をもう一回塞いだ。
不機嫌そうに鼻を鳴らしながら、それでもカミュは情熱的に返してくる。
舌絡ませ方も、わざと音を立てて吸うやり方も、甘噛みするタイミングも、俺が教えた。
カミュはそれを実に要領よくこなす。
「ん、っふぅ…」
息を漏らしながらカミュは俺の体に手を沿わせた。
胸板をなぞり、誘うように下腹部を行ったり来たりする。
舌を軽く噛みながら「欲しいのか?」と笑いかけると、鋭い目つきで睨んでくる。
この目が、俺は嫌いじゃない。
俺は喉の奥で笑いながら、そっとカミュを押し倒した。
夜は、まだ長い。