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自分の胸に去来する熱が、一般に恋と呼ばれるものだという事に気づいたのはいつの事だったか。
九龍と行動を共にするようになって親しくなった椎名リカとなんとなく恋愛筋の話になった時だ。「恋とか、よくわからないよ」と零した取手に「まぁ、なんて事でございますの!」と椎名が言い、そのまま女子連中を召還しての恋愛談義になったのだ。
その時に懇々と皆から語って聞かされた「恋」なる病の症状が、自分が九龍と共にいる時に起こる事にあまりに一致していたため、これは、と思ったのだった。
そう思い始めると、熱は加速してしまった。
自分は葉佩九龍が好きなのだ、と思うと、今までうすぼんやりとしか自覚していなかった様々な思いが急速にはっきりと形をとり始めた。
自分が好きになった相手が同性であるという事よりも取手を困惑させたのは、その思いの深さと強さである。そしてその思いから生まれる欲望の醜さ禍々しさが、取手を恐れさせた。
だがその恐怖もやがて、たぎる熱情によって消えてゆく。