追憶の緋 -7-




部屋に入る。
暗く、湿った部屋だ。
暗い。
ため息がでる。
ため息?
馬鹿だ。
心の中で繰り返す。
「馬鹿だ」
吐き出すように言った。
聖衣が体を離れ、台座に納まる。
見たくもない。
見たくもない。
思い出したくもない。
椅子に座って、目をつむる。
呼吸をする。
心臓が動く。
胸が上下する。
気温が下がっていくのを感じる。
落ちていく太陽のぬくもりを感じる。

俺は、生きている。

俺は亡者じゃない。
俺は生きている。
どんなかたちであれ、とにかく。
俺は、生きているんだ。
しばらくそうして座って、ようやくマトモに思考回路が働き出した。
ったく、馬鹿みてぇだ。
阿呆か?俺は。
さっきとは別の意味で俺は気分が悪くなった。
俺はカミュになんて言った?ったく。自分の言葉に責任も取れないようじゃ、聖闘士なんて柄じゃねぇよ。本当に、馬鹿だ。
俺は軽く頭を振った。
探しに行こう。それから頭下げるんだ。俺が悪かったんだから。
頭を下げるのは気恥ずかしいし、俺自身に腹も立つけど。けじめはつけねぇとな。
まだ重たい体を持ち上げた。
その時だった。カミュの小宇宙を感じたのは。