片思いラブ -7-
「ぴぎゃあぁああぁあ!」
「は、はっちゃん……そんな、色気の無い」
「だああぁあぁああぁってぇええぇええぇぇえ!」
「ちょっと、夜だし……ね?」
静かに、と取手は口に指を当てるが、葉佩はそんなもんおかまいなしに絶叫した。
「おまっ!おまっ!今!今!」
「うん?」
「キキキキキキキキ……!」
「うん、キスしたけど……嫌だった?」
不安そうに、取手が葉佩を見つめた。
いや、嫌な訳無いけどでもなにこの釈然としない気持ちと言うか迷走はなはだしいこの心臓の鼓動は何!
唇に残っている柔らかい感触に、葉佩は目の前も真っ赤になる想いだった。
背もたれ代わりにしていたベッドのシーツを引っ掴みながら、葉佩はぎゃーぎゃーと喚いた。
「はっちゃん……ひょっとして、初めて?」
「や…いや、ざざ、残念ながら初めてではないですけども……」
「それとも………嫌…だった?」
取手が浮かべる悲しそうな光に、葉佩は息を呑むが、真っ赤になった頬と混乱する頭はどうにもこうにもならない。
「いいいいい嫌なわけないだろだってほら俺はお前が好きでお前は俺が好きでって…きゃーー!」
自分で言っておいて、自分で激しく照れる葉佩九龍。
真っ赤になった顔を隠してぶいんぶいん首を振る葉佩は、なんとも色気が無い。
無い、のだが、恋とは恐ろしいもので、そんな葉佩も取手は可愛いなぁと素直に思う訳である。
「ね……僕はもっと、したいな………」
思考回路はショート寸前。
というかもう完全に焼き付いて焼き付いて焼き切れてんじゃないかと葉佩は思う。
なんだなんだ最近の高校生はえらい手が早いじゃないか!ここは日本だろう!?アイラビューの次に速攻でベッドインする白人社会とは違うんじゃないのか!?
一方取手はそんな葉佩の苦しみを知ってか知らずか葉佩にまた顔を近づける。
「だって、君は………いつか、行ってしまうんだろう……?」
「あ………ぅう…」
取手の言葉に、葉佩はふと我に帰った。
そう、遺跡は大分掘り進んだ。あともう少しで任務は完了する。そしてこの任務が完了したら、葉佩はまた次の仕事を請け負う筈だ。
葉佩が卒業までいる可能性は、ない。
「だから……それまでに…残された時間の中で、君と……少しでも、思い出が欲しいんだ」
「んな…事、言うなよ……」
「はっちゃん…」
「そんな、もう別れるみたいな事…!」
葉佩はきゅとと取手を睨みつけた。取手は葉佩の言葉に苦笑を漏らし、あやすように葉佩の頭を撫でた。
「ごめんね…そんなつもりは、ないから。安心して?」
「ったりまえだ!…離れても…別れる気はないからな!」
ぷんっと口を尖らせる葉佩を見て、取手はまたむらむらとした衝動を感じた。
「はっちゃん……」
ゆっくりと、顔を近づける。ボンッと音を立てて葉佩の顔が赤くなる。
が、今度は葉佩は拒んだりせず、恐る恐る瞼を閉じた。葉佩が瞼を閉じた事をしっかり確認した後、取手は葉佩の唇にそっと自分の唇を重ねた。
再び触れた柔らかい感触に、取手の熱が高まる。
もっと深く、とばかりに唇を押し付けると、葉佩が困ったように鼻を鳴らした。
その吐息の甘さに、取手は一気に高められた。
それでも葉佩が嫌がりはしないかと、まずはそっと舌先で唇をつついてみた。
すると葉佩はびくんと身体を震わせて、きゅっと取手の腕を掴んだ。しかしそれ以上拒んだりはせず、唇も特に強く閉ざされたりはしなかった。
これは、一応許可を貰ったという事なのだろうかと、取手はもう何回か舌先で葉佩の唇に触れた後、ゆっくりとその奥へと侵入していった。
生暖かい、湿ったものが入って来る感触に、一方の葉佩も心臓を高鳴らせた。
ぎゅっと目をつぶり、取手にしがみつく。
が、それは寧ろ取手を煽った。
にゅるにゅるとしたものが、葉佩の舌に絡む。
恐ろしいくらいに生々しい感触から逃げようと、葉佩は必死に舌を動かすが、狭い口腔の中だ、動けば動いただけ、絡み合う。
舌を伝わって、取手の唾液が葉佩の口内に入り込んできた。
くちゅくちゅと濡れた音が響き、葉佩は一層身を固くした。
「ふ……ん………ぅ」
どんどん深く、激しくなってゆく取手の口付けに、葉佩は堪らず息を漏らす。
漏れた吐息の甘さに我ながら愕然とするが、頭はもはや正常に機能する事を拒否し、葉佩は取手にされるがままだった。
気がつけば葉佩はベッドにもたれ、取手に覆い被さられ、両頬をがっちり取手に挟まれていた。
「や……あ、か………」
ようやく解放された時には、唇は痛いくらいに赤くなっており、目には涙が浮かんでいた。
「はっちゃん……」
取手は囁きながら、するりとTシャツの裾から手を差し込んだ。
ひやっこい取手の掌が、葉佩の腹を撫でる。居心地悪そうに葉佩は身を捻るが、取手はそんな事おかまいなしに、また葉佩に口づけた。
「ん、ん……」
また、生暖かい湿ったものが、にゅるりと口の中に入って来た。目眩を覚えながらも、葉佩は素直にそれを受け入れた。
キスの一方で、取手の掌はするすると葉佩の身体を伝い昇ってゆく。
取手の指先にぷっくりとしたものが触れた瞬間、葉佩がぴくんと身体を動かした。
「ん、ふ……」
漏れた息を、快楽の証と受け取った取手は、その突起をきゅっとつまみ上げた。
「っ、や!」
顔を背けながら葉佩が声を上げる。困ったような表情で見上げて来る葉佩に、取手の心拍数が上昇した。
「ここ、気持ちいい……?」
めくれ上がったシャツのすそから、取手はもう一方の掌も差し込んだ。
取手の大きな掌が、葉佩の胸元をまさぐり撫で、小さな乳首を指先で弄ぶ。
葉佩は取手の言葉に顔を真っ赤にしながら目を背けるが、喉の奥から微かな声が漏れてしまう。
実際、葉佩のそこはひどく敏感だった。取手が悪戯に爪先でひっかけば、葉佩は声を上げて仰け反った。
「あぁ……ねぇ、もっと……触りたいよ…はっちゃん………」
恍惚とした表情で、取手が葉佩を見つめた。
触れるだけの口付けを葉佩の顔中に落としながら、取手は抑えきれない息を吐き出した。
「もっと、触りたい……もっと、はっちゃんと、触れ合いたい……」
取手の言葉の真意を汲み取って、葉佩は身を縮こまらせた。
「……いやかい?」
あやすように、取手は葉佩の頬を撫でた。
ここでいやと言えば、取手はきっと身を引くのだろう。
しかし、葉佩の身体ももはや、どうにもならない状態になっていた。
葉佩は取手の方に顔を埋めると、小さくふるふると頭を振った。未だ怯えが残るその仕草に、取手は小さく笑うとぎゅっと力強く葉佩を抱きしめた。
「もっと……近くなろう?」
取手の腕の中で、葉佩がきゅう、と鳴いた。