片思いラブ -8-




「ん、あっ、や…ん」
溢れる声を止めようにも、止められない。葉佩は、真っ赤に染まった頬をシーツに押し付けた。
取手の言葉に頷いたらば、取手はさっさと葉佩を引っ掴んでベットの上に押し上げて、ついでにそのままのしかかって来た。
突然の展開に目を白黒させているうちに、気がつけば葉佩はTシャツはずり上げられ、胸元は弄くられ、あまつさえ乳首周辺から脇腹にかけてさんざんキスをされまくっていた。
僅かな間ではあったが、飲み込みが早いと言おうか何と言おうか、取手は葉佩の弱いところを探り当てていた。
「はっちゃん……胸、弱いんだね」
「っか!…っ、さい!」
睨み上げる目元は赤く染まり涙が溜まっている。いつもの健康的で健全な顔つきとは全く異なった、媚態を含むその表情に、取手は思わず目を細めた。
「うん。そんなところも、可愛い」
葉佩が反論しようと口を開いた瞬間、取手の指先が葉佩の乳首をつまみ上げた。
「ひゃ、あ」
開いた口から悲鳴にも近い嬌声が上がり、葉佩はびくんと身体を丸めた。
「触りにくくなっちゃうよ…」
弱点を守るかのように身を縮こませる葉佩に囁くと、取手は丸まった背中に口づけた。
「っや」
肩甲骨の周辺に舌を這わせれば、今度は仰け反って声を上げる。
「…敏感だね」
「いちいち言うなっつの!」
怒鳴りながら取手の方を振り向いた葉佩は、取手と目を合わせて一瞬身を竦めた。
そこには、昏い目に欲望の光をたたえた雄がいた。
「もっと…感じて……?」
甘い言葉は、酷く危険な香りを漂わせていた。が、葉佩は恐怖を感じる事すら出来なかった。
取手はむき出しの乳首に舌を這わせると、舌先でこねくり回した。もう片方は指で摘み上げ、空いた片手で胸元から下腹部にかけてを幾度も撫でる。
ひ、ひ、と喉を引き攣らせる葉佩に取手は気を良くして、片手は下腹部からそのまま更に下に下がっていった。
「ッな!ぁ」
ズボンの上から熱く猛ったそこを掴まれ、葉佩は情けない声を上げた。
掌で、葉佩が間違いなく興奮している事を確認した取手は、その事実に浮かされたのか、そこを布越しにぐいぐいと撫でた。
「や、あ…ぃた……こ、ら!」
舌の足りない口調で取手を責めるが、それくらいで怯む取手ではない。
泣きそうな葉佩の声は、取手に一層の興奮をもたらした。
ハーフパンツの紐を解く手ももどかしく、取手は下着ごと葉佩の下半身から布を引きずり下ろした。
熱のある部分が急に外気に触れて、葉佩はひくりと身体を縮こませる。
膝に絡むズボンと下着の感触に気持ち悪さを覚えて、取手に抗議しようと顔を上げたと同時に、取手が葉佩の下を手で掴んだ。
「んな、あ」
びくんと肩が揺れる。
濡れた先端を指で撫でられ、堅くなっている根元を握られた。
「や、な」
性急な展開に、葉佩は声を震わせる。
「や、だ、や……」
拒否の言葉を上げる葉佩に構わず、取手は大きな掌で葉佩のペニスを包み込んで手首を上下させた。
昨今は性的な行為から離れていた葉佩のそれは、軽くしごかれただけではち切れそうになる。
「やぁ…め、や…だぁ…」
涙目で葉佩は取手の肩をぐいぐいと押した。が、取手が手を離そうはずもない。
長い指が絡み合い、根元から先端まで余すところなく触られる。
「はっ、や、ん!…め、や、んぁあ…!」
あっという間に達しそうになるのを必死に耐えながら、葉佩は取手の腕に爪を立てた。
取手は一瞬手を止めてまじまじと葉佩の顔を見た。
「いやかい?」
「そっ、な、じゃ…な、けど……」
肩で息をしながら言葉を詰まらせ、視線を泳がせる葉佩を見て本気で嫌がってるわけではない事を確信した取手は、今度は自分の手の中のものをまじまじと見た。
血管を浮かべて赤く膨れ上がっているそれは、間違いなく取手の股間にもあるものだ。
しかし不思議と嫌悪感はなかった。むしろもっと触りたいとさえ思う。…葉佩のでなければ真っ平ごめんだが。

ぺろり

「ひんっ!?」
やおら取手は葉佩の屹立するそれに舌を這わせた。根元に近い筋を直撃した生暖かい物は、興味深そうに同じ場所を数度行き来した。
「っか…!やめ…、も…」
顔を真っ赤にして葉佩が取手の髪を掴んで引っ張った。
「いたた、痛いよ、はっちゃん」
「んなろー!ちげーだろもー!」
駄々をこねる子どものように葉佩は首を振って喚いた。
「お前なー!よくんな汚いとこ平気で……!」
「嫌だった?」
半泣き状態の葉佩に、若干的外れな答えを返しながら、取手は葉佩の頭をくしゃりと撫でた。
「嫌とか……お前こそ、気持ち悪くねーのかよ?男のあれだぜ?よくもまぁ…」
「はっちゃんのだから」
さらりと返された言葉に葉佩は息を呑んだ。
取手の目は驚くほど真剣で、思いも寄らない感情の深さに戸惑う。
「っか……お前、ぜってー、おかしい」
「うん、いいよ別に」
一切こたえていない様子で取手は首を傾げた。
「僕だって、他の人のは御免だよ。でも…はっちゃんのだったら、平気だ」
「……ばか」
ストレートな告白に、葉佩は真っ赤になって俯く。
「むしろね」
葉佩に跨がりながら、取手はあっという間に服を脱ぎ捨てた。
「君を」
ぐいと取手が葉佩をベッドに押し付けた。
「壊してしまうんじゃないかって」
葉佩の熱に、取手の熱が押し付けられた。
葉佩が、悲鳴のような泣き声を上げる。

「そればっかりが、怖いよ…」

あぁその笑顔のなんと恐ろしくも魅惑的な事かと葉佩は堕ちてゆく脳髄で思考した。



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