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「っく、い、やぁん…ッ」
「もう、大きくなっているね」
「や!…な、事…言わな…」
下半身をまさぐれば、そこは取手の愛撫に素直に反応していた。
布の上から幾度かさすれば、熱が高まり固くなってゆくのを感じた。おそらく自分のものも、同様に昂っているに違いない。
「ね…脱いで?」
膝の上の九龍に囁けば、おずおずとではあるが、頷いた。
シャツのボタンを外そうとするが、指先が震えるのかうまく外せない。取手はあえて手を出さず、じっと九龍が自分でボタンを外し終えるのを待った。取手が自分の所作を見守っているのが一層九龍の緊張を煽るのか指はますますもつれた。
相当な時間をかけてボタンを全部外し終えると、九龍はほぅっと息をついた。
「……あ、の…」
「脱いで」
はだけたシャツの前を掛け合わせながら、九龍がおずおずと取手を見上げる。取手の言葉に困ったように眉を寄せるが、しかしやがて決心したかのようにシャツをするりと脱ぎ去った。
九龍の肌には古傷がいくつも刻まれ、淡い桃色になっている。そのいくつかを取手は指先でなぞり、自分の求めるこの少年が辿って来た道を思った。
「下も」
意地悪な取手の要求に、九龍は頬を染める。が、言われるままにズボンに手を掛けた。取手の上で窮屈そうにズボンをずらしてゆき、最後には足をばたばた振って床に落とした。黒いボクサーパンツの形が不自然に歪んでいるのを見て、九龍は思わず目を瞑った。
「これも…ね…」
布の上から熱をもったそこを何度か撫で、取手は九龍の耳元で囁いた。耳にかかる吐息に震えながら、九龍は目を瞑ったままでパンツを下ろした。
蛍光灯の下で全裸になった九龍が照らされる。取手はその体をそっと抱きしめた。首筋に唇を押し付けながら、晒された肌をなぞる。全身を辿るに従って九龍の息が上がってゆくのを見て、取手は薄く笑った。
音を立てて肩口に吸い付くと、九龍の体がびくんと跳ねた。
「あぁ…九龍君…」
うっとりとした声で取手は囁くと、九龍の太ももの内側を撫でた。
「恥ずかしいね…一人だけ裸になって。ここも…こんなにして」
笑いを含んだ声で九龍を煽る。するりと九龍のものを包むと、それは取手の手の中で固さを増した。やんわりと握りしめていると、九龍が甘えるように取手に背中を擦り寄せてきた。甘い吐息が取手の耳に心地良い。
熱に浮かされた目で、九龍が取手を見つめる。
「かま…ち、くん」
首をひねって、九龍が取手の頬を舐めた。柔らかく生暖かい感触に、取手の背中が震える。
「九龍君…」
取手は九龍に口づけると、抱きかかえてベッドにそっと寝かせた。
「ん……」
緩んだ唇から息が漏れる。九龍を見下ろしながら取手は自分も服を脱いだ。相応に鍛えられた体が露になってゆく様を九龍はじっと見つめていた。そういえば、いつも暗がりであっという間に脱がされてあっという間に追いつめられてしまうから、こうして取手の体をまじまじと眺めた事はなかったな、と思い当たる。
肘をついて上体を起こし、取手の肌に触れてみた。自分よりも低い体温。傷のない、固い筋肉。遠慮がちに指先で辿ってから、掌を当てる。取手が何も言わない事をいいことに、九龍はゆっくりとそこに顔を寄せた。火照った頬にひやりと取手の肌が気持ちいい。耳を押し当てて耳を澄ませば、少し早めに打つ鼓動が聞こえた。
「九龍君…」
囁く目の奥に光る熱情に九龍は気付き、予感に身が震えた。
膝下を掬われる。むき出しになったそこに生暖かいぬめりを感じる。それは九龍の後孔を濡らし、やがてひっそりと侵入して来た。内部に触れる柔らかさに九龍は思わず声を上げる。そこの奥の奥が、甘く疼く。
そこが舌をすんなり受け入れるようになると、取手は次に指に唾液を絡めてあてがった。細い長い、節高い指が九龍の内側を探る。
「んぁあっ!…あ、ぅん…」 中で指を折られる。かき混ぜられ、拡げられる。ただそれだけで自分のペニスが震えるのを九龍は自覚した。
「っ、は…っく…か、まち…くん」
名を呼び、腰をくねらせる。内奥の疼きに、もう、耐えられない。
「どうして欲しいの?」
ねだる九龍を見て、取手が囁いた。それと共に指が抜かれる。寂しさに後ろがきゅうと締まった。
「ね…どうしてほしい…?」
甘くかすれた声で、取手が九龍に再び囁いた。
「ふ…ん、ぅ……」
媚びる目で九龍が取手に腰を擦り寄せた。が、取手は相変わらず意地悪く九龍を見つめる。浮かぶ微笑みはあくまでも優しくて、九龍は観念して目を閉じた。
「か…かまち…くんが、…ほ、……ほし、……です」
泣き出しそうなくらいに目を潤ませる九龍を見て、取手は思わず声を上げて笑った。心外だという顔で取手を睨みつけようとした九龍の唇を取手の唇が覆う。
「いいよ…」
熱が、自分を侵す。受け入れ慣れているはずなのに、何故か今日は妙に感覚が鋭敏だった。後ろの孔が取手の形に合わせて歪められてゆく。いちばん感じやすいところを通過して、奥を目指してそれは進む。
奥まで収まったところで、九龍が取手を締め付けた。締め付けながら、細かく震えるそこは取手にもう次の動きをねだっていた。
まだきついそこを緩めようと、取手が軽く九龍を揺さぶった。
「うっ、ん!ぁあっ!」
取手のペニスと自分の内部が擦れ合う。仰け反ってこえをあげれば、動きが大きくなった。
「んんッ!…ふ、ぁあ、あ…ッ」
取手は九龍を揺さぶりながら、奥へ奥へと腰を押し付けた。熱いペニスが暴れ、目の前が真っ白になる。それにも関わらずもっともっととそこは収縮を繰り返し、取手の動きを誘った。
きついそこが取手の形に合わせてほぐれてきたのを見計らって、取手はぐっと腰を引いた。喪失感に九龍は切なげに腰を振る。そこを一気に突き上げられて目の前がスパークした。
「いぅッ!ひ、ぃあぁあっ」
取手の先端が九龍の弱いところを責め立てる。後孔が締まり、腰が跳ねた。
幾度か突かれたところで、九龍のペニスが射精した。白い液体が互いの体にかかるが、取手は構わず突き上げた。
「うぅッ!い、ひ…ッん」
呼吸もままならず九龍が喘ぐ。取手に責められるそこからどろどろに溶けてしまいそうな気がする。
熱の熱さにもがくが、射精した後も熱は一向に収まってくれない。それどころか、激しくなってゆく取手の動きに熱は昂り燃えて、九龍は一層もがいた。シーツが乱れ、頬を涙が伝う。
「んぁあ、あッ…!か、かまちく…」
熱いのだと、九龍はしゃくりあげながら取手に助けを求める。頬を涙が伝うのを感じる。取手は九龍に甘く口づけると、先端で強く感じるところを擦った。
「ひ、ッん…あ、あぁッ!」
固さを取り戻していた九龍のそれがまた勢い良く精を放つ。
「まだだよ…まだだ……」
動きを緩めないまま取手は九龍を抉った。擦れ合うそこが濡れた音を立てる。
奥を突かれるたびに目の前に星が飛び、内側が小刻みに震える。震えはまた次第に細かくなり、途切れない熱がまた集中してゆくのを感じる。
「っひ、いぁあ、あ…っめ、へ…へん…なる、ぅ…!」
頭の髄が溶け、全身の感覚が遠のく。ただ燃えるように熱い。
泣きじゃくりながら途切れ途切れに吐き出された言葉に、取手が大きな両手で九龍の顔を包み込んだ。
「へんに、なるんだよ…」
「っん、う…か、まち…くん…っ!」
「僕と…一緒にね…」
三度目の精が下腹部で弾け、内奥に熱い液体が注ぎ込まれた。
視界がブラックアウトし、どろりとした闇の中に意識は沈んでいった。